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外来語の読み方

外来語とは元々は外国語でしたが、日本語として使用されるようになった言葉です。
インターネットの普及に伴い、「server」や「Firewall」といった英単語も日本語として一般的になりました。しかし、「サーバー」なのか「サーバ」なのか、あるいは「ファイアウォール」なのか「ファイヤーウォール」なのかなど、読み方を迷ってしまう単語もあります。
長音符号「ー」をつけるべきか、カタカナでどのように記載すれば良いのかを解説します。

 

長音符号「ー」の扱い方

現在の基準

2022年に建議され内閣官房長官通知された「公用文作成の考え方」では『外来語の表記は、「外来語の表記」(平成3年 内閣告示第2号)に基づく』と記載されています。
そして、「平成3年 内閣告示第2号」では『長音は、原則として長音符号「ー」を用いて書く。』『英語の語末の‐er、‐or、‐arなどに当たるものは、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし、慣用に応じて「ー」を省くことができる。』と記載されています。
つまり、現在の基準としては長音は伸ばすことが正しいとされています。
例:サーバー、ユーザー、コンピューター、エレベーター

過去の基準

「平成3年 内閣告示第2号」が制定される前、英語の長音に関しては旧日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)にて『2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は(長音符号を)省くことを原則とする。』と記載されていました。
昔はディスプレイの解像度が低く、メモリが高価で容量が少なかったため、1文字減らして表記することのメリットがあり、IT業界も上記旧JIS規格に準拠していました。
このため、過去の基準としては長音は伸ばさないことが正しいとされていました。
例:サーバ、ユーザ、コンピュータ、エレベータ

長音符号「ー」の扱い方

では、これから先に作成する文章においてはすべて長音符号「ー」を付けるべきでしょうか?
過去の基準としては長音符号「ー」をつけていなかったため、平成3年 内閣告示第2号では『慣用に応じて「ー」を省くことができる。』としています。このため、過去から長音符号「ー」を省いた「サーバ」などを使用している場合は変更する必要はありません。
「公用文作成の考え方」では『一つの文書の中で、同じ用語に幾つもの表記が混在することのないようにする(引用部分を除く。)とともに、個人の判断に頼らず、各部署で表記に関する考え方を共有しておく。』と記載されています。

つまり、下記2点が重要になります。

①長音符号「ー」を付けるか付けないかは統一する。(同一文章内の両方使用はNG)
②組織として統一した考え方をまとめておく。

これを踏まえてどちらを使用するか判断してください。

Signatureの読み方

「Signature」は署名・サインといった意味を持つ単語です。WAFなどのセキュリティ関連用語としてはサイバー攻撃による不正な通信やパターンを識別するためのルールという意味を持ちます。また、プログラミング用語としては関数や引数などの組み合わせのことを示します。
この単語はウェブサイトや辞書によって記載されているカタカナが異なるという特徴があります。「シグネチャ」「シグニチャ」「シグネチャー」「シグニチャー」という「ネ」と「ニ」の違いと長音符号「ー」を付けるか付けないかの違いにより4パターンあります。
弊社含むセキュリティ関連の企業・組織を調査してみたところ、「シグネチャ」が大多数で使用されていました。このため、セキュリティ関連では一般的に「シグネチャ」が読み方として用いられています。
なお、少数ですが「シグニチャ」「シグネチャー」といった読み方が用いられていることもありました。
結論として、「Signature」のおススメの読み方は「シグネチャ」です。

Trafficの読み方

「Traffic」は交通・通行・交通量といった意味を持つ単語です。コンピューター関連用語としてはインターネットなどの通信回線において転送されるデータ量のことを意味します。
この単語も「Signature」同様にウェブサイトや辞書によって記載されているカタカナが異なるという特徴があります。「トラフィック」「トラヒック」という「フィ」と「ヒ」の違いにより2パターンあります。
弊社含むコンピューター関連の企業・組織を調査してみたところ、「トラフィック」が大多数で使用されていました。このため、コンピューター関連では一般的に「トラフィック」が読み方として用いられています。
元々は車両の交通量や電話の混雑具合などの意味で使用されている経緯もあるため、歴史のある企業・組織では「トラヒック」が使用されている場合も散見されました。
また、法令・省令では「トラフィック」「トラヒック」の両方の使用があります。
結論として、「Traffic」のおススメの読み方は「トラフィック」です。

Firewallの読み方

「Firewall」は防火壁という意味を持つ単語です。コンピューター関連用語としてはネットワークの結節点に設置し、設定したルールに基づき内外の通信を遮断するシステムのことを意味します。
この単語は大抵のウェブサイトや辞書に「ファイアウォール」と記載されています。
弊社含むコンピューター関連の企業・組織を調査してみたところ、「ファイアウォール」が全ての企業・組織で使用されていました。このため、コンピューター関連では一般的に「ファイアウォール」が読み方として用いられています。
一方、元々は防火壁という意味があるため、製造業の世界では「ファイヤーウォール」という読み方も用いられています。例えば、自動車のエンジンルームの出火から車内を遮断するための物理的な板のことを「ファイヤーウォール」と呼称しています。
また、金融業界では部門間の交流を意図的に遮断する「ファイアーウォール規制」があります。
結論として、「Firewall」のおススメの読み方は「ファイアウォール」です。

まとめ

外来語の末尾に長音符号「ー」を付けるべきか付けないべきか。あるいは、カタカナでいくつか読み方のある単語をどのように記載すべきかか、という問題については「公用文作成の考え方」にある『一つの文書の中で、同じ用語に幾つもの表記が混在することのないようにする(引用部分を除く。)』ということが重要になります。
このため、表記が混在する「表記ゆれ」がないようにしていればどの表記を用いても良いです。そのため、どの表記を用いるかを組織として統一した考え方をまとめておき、「表記ゆれ」がないよう使用しましょう。

参考文献:
「公用文作成の考え方(建議)」(文化庁)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf)
「外来語の表記 留意事項その2(細則的な事項)」(文化庁)(https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/gairai/honbun06.html)

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